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【1】ガイドラインの改訂
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大腸癌治療ガイドラインは、大腸癌研究会により2005年に初版が作成され、
2009年7月に医師用2009年版として改訂されました。
それから1年しか経過していない今年7月に医師用2010年版が出版されました。
その主な理由は、化学療法のレジメンに変更を行ったからです。
具体的には、切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法の一次治療に
新たにそれまでは二次治療以降に使われていたセツキシマブなどの薬剤が
適用されたのです。
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【2】セツキシマブ(Cetuximab)
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セツキシマブは癌細胞の表面の上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とする
高活性IgG1モノクローナル抗体で、分子標的薬剤の一種です。
『参考文献:【IFA_170】~【IFA_173】』
2004年にFDAにより承認され、日本でも2007年7月にEGFR陽性の
切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌の治療薬として
厚生労働省より製造販売承認を受けています。
『参考文献:【IFA_174】』
商品名アービタックスとして販売されています。
これまで進行した大腸癌に推奨されてきた一次治療としては
5FUなどを中心としたFOLFOX治療やFOLFORI治療でした。
これがうまくいかなかった場合に二次治療として、これらに加えて
セツキシマブやベバシツマブ(Bevacizumab)の使用が推奨されていました。
さらに三次治療としても用いられます。
これに対して、新しいガイドラインでは、一次治療でKRAS野生型の場合
FOLFOXやFOLFORIと併用するばかりではなく、二次治療においては
単独での治療も推奨されています。
セツキシマブと同時にパニツムマブ(Panitumumab)も
同様の扱いを受けていますが、ここではKRAS遺伝子の存在が
大きく影響しています。
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【3】KRAS遺伝子に対する特異性と大腸癌の個別化治療
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多くの臨床試験で、セツキシマブはKRAS遺伝子に変異が見られる場合には
効果が弱いことが示されています。『参考文献:【IFA_175】』
KRAS遺伝子の型を調べ、もし野生型であるならばセツキシマブによる
治療に効果が期待できるというものです。
日本人では30~40%が変異型であるといわれています。
残る60%の患者さんには適用できる訳です。
このことから、腫瘍の遺伝型による個別化治療
(オーダーメイド治療の一種ともいえるかもしれません)と
言われるようになったのです。『参考文献:【IFA_176】』
加えて、本年4月より、大腸癌を始めとするいくつかの癌での
KRAS遺伝子診断に保険適用が認められました。
『参考文献:【IFA_177】』
これにより、より的確に進行型の大腸癌の化学療法が
行えるようになりましたので、大腸癌治療ガイドラインが
わずか一年で改訂されたのです。
2010年5月に厚生労働省は
セツキシマブの転移性頭頸部扁平上皮癌への新適用について
臨床試験を行うよう要請しています。
今後期待される薬剤と言われています。
『参考文献:【IFA_178】』
大腸癌治療ガイドラインの改訂と化学療法の新適用
~一次治療にセツキシマブなど~