難病に指定され、患者数も10万人とされている
潰瘍性大腸炎の治療には、前回ご紹介したように、
様々な薬剤が用いられています。
それらの薬剤の中で、抗TNF-α抗体である
インフリキシマブがすでに市販され、
臨床に用いられているということから、前回ご紹介いたしました。
第2回目としては、まだ市販には至らず、臨床試験の最中ですが、
近い将来臨床に使われるであろう薬剤を紹介します。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
【3】アダリムマブ(Adalimumab)
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
前回紹介しましたインフリキシマブがヒトとマウスの
キメラであったのに対し、アダリムマブは完全にヒト由来の
IgG1モノクローナル抗体です。
これは世界でもはじめてのものであり、ヒトTNFに対して
高い親和性と特異性を持っているのが特徴です。
また持続性もあり、2週間に一度程度の皮下注射で済むことから、
患者さんのQOLを高める効果もあります。
『参考文献:【IFB_028】~【IFB_031】』
アダリムマブは、関節リウマチの治療薬としては
2002年に米国で承認されて以来、2003年にはEUで承認され、
2008年の時点では世界の75か国で承認されています。
日本では2005年に申請され、2008年に製造承認を受けています。
また、クローン病では一足早く2007年に米国で承認されていますが、
その根拠となった大規模臨床試験では、
インフリキシマブの効果が不十分であった困難な症例に対し、
高い緩解率が得られたと報告されています。
『参考文献:【IFB_032】』
日本でも、2009年9月にクローン病への追加承認が申請されています。
これらより、潰瘍性大腸炎についても同様な効果が期待されており、
日本で2009年3月より、多施設、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照の
第III相の臨床試験が、進められています。
2013年には終了する予定ですが、2011年7月にはアウトカム評価のための
データ収集が行われています。
(ClinicalTrial.govの登録番号:NCT00853099)
『参考文献:【IFB_033】』
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
【4】ゴリムマブ(Goliomumab)
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
アダリムマブ同様完全ヒト型のTNF-α抗体で、
やはり皮下注射によるものです。
2007年1月よりCentocor社により多施設、ランダム化、プラセボ対照の
第III相試験が行われており、2011年10月には結果が出る予定です。
(ClinicalTrial.govの登録番号:NCT00488631)
『参考文献:【IFB_034】~【IFB_038】』
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-==-=-=-=-=-=-=-=
【5】センルトリズマブペゴル(Certolizumab pegol)
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-==-=-=-=-=-=-=-=
ポリエチレングリコール(PEG)結合のヒト化TNF-α抗体で、
低分子化されて血中半減期が長くなっていることや
免疫担当細胞のアポトーシスを誘導しないなどの特徴を持っています。
クローン病についてはすでに多くの臨床試験が実施され、
その結果として、2008年には米国で中等症以上の
クローン病に対して認可されています。
『参考文献:【IFB_030】~【IFB_031】』
潰瘍性大腸炎での大規模臨床試験はまだ行われていませんが、
今後の実施が期待されています。
『参考文献:【IFB_037】~【IFB_038】』
潰瘍性大腸炎に対するTNF-α抗体による治療 Part.2