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【1】ワーファリンは投与管理が難しい
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術後や心房細動など、血栓を起こしやすい状況や疾患に対して、
血栓を予防するために、これまでは経口で投与できるワーファリンが
用いられてきています。
しかしながら、ワーファリンはその効果の幅が狭く、
また患者さんにより個体差があります。
特に肝臓でビタミンK依存性血液凝固因子の合成を阻害するため、
食物や他の薬剤の影響を受けやすいといわれています。
そのため、常に有効範囲を測定し、モニタリングをしていなければならず、
患者さんのQOLの低下にも関わっています。
そこで、より投与管理が容易で、安全な薬剤の開発が進められています。
『参考文献:【IFB_175】~【IFB_177】』
中でも、トロンビン阻害薬とXa因子阻害薬が
臨床の現場に登場しはじめています。
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【2】トロンビン阻害薬 ダビガトラン(Dabigatran)
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ダビガトランはワーファリン同様の経口投与薬です。
低分子量のトロンビン阻害薬で、消化管で吸収されます。
『参考文献:【IFB_178】
』
薬理作用としては、血液の凝固過程で主要な役割を担う
トロンビンの働きを特異的かつ選択的に阻害するものです。
トロンビン阻害薬は現在いくつか開発中ですが、
ダビガトランはすでに2008年には欧州で、
人工股関節・膝関節置換術後の血栓予防薬として承認されています。
また、2009年にはRE-LYという日本を含む
多国籍の多施設臨床試験(第III相)の結果が発表され、
ワーファリンと比較して安全性や有効性が示されました。
『参考文献:【IFB_179】』
(ClinicalTrials.gov臨床試験番号 NCT00262600)
これにより心房細動による脳血栓の予防薬として
米国のFDAが承認の勧告を行いました。
欧米や日本でも承認申請中で、近い将来の承認が期待されています。
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【3】Xa因子阻害薬 フォンダパリヌクス(Fondaparinux)
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フォンダパリヌクスは化学合成により作られた硫酸ペンタサッカライドの
ナトリウム塩であり、アンチトロンビンに特異的かつ選択的に結合し、
アンチトロンビンの抗Xa因子活性を増強することによりトロンビンの生成を
阻害するものです。
経口投与ではなく皮下注射として処方します。
現在フォンダパリヌクス以外にも多くの薬剤が開発されていますが、
日本で上市されているのは一つです。
『参考文献:【IFB_180】~【IFB_181】』
2001年米国で承認されて以来世界の65カ国で承認されています。
日本で第III相臨床試験の結果承認されているのは、
2007年4月承認の静脈血栓塞栓症のリスクが高い
下肢整形外科手術者に対する適応でしたが
(ClinicalTrials.gov臨床試験番号 NCT00911157)、
2008年5月に腹部手術施行患者にもその利用が認められています。
『参考文献:【IFB_182】』
人工膝関節置換手術において、深部静脈血栓の予防では、
ワーファリンと同等の効果が得られたとの症例報告もあります。
『参考文献:【IFB_183】』
さらに、海外では内科疾患に対する臨床試験も実施されており、
新たな抗凝固薬としての可能性を秘めています。
『参考文献:【IFB_184】』
日本でも急性肺血栓塞栓症や急性深部静脈血栓症に対する
適応が申請されています。
新しい抗凝固剤 Part.1 ~ワーファリンに代わる新しい抗凝固剤~