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【1】大規模臨床試験による薬効のエビデンス
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昨年11月に開催された米国心臓協会の学術集会(AHA2010)で、
注目された報告がありました。
それは軽症の心不全に対する選択的アルドステロン拮抗薬である
エプレレノンの大規模臨床試験(EMPHASIS-HF試験)の結果で、
標準治療に加えて投与することで収縮期心不全患者の死亡や
入院リスクを大幅に減少させる、というものでした。
この報告は即座にNew England Journal of Medicine誌に掲載され、
世界の注目を集めました。
『参考文献:【IFI_001】』
http://www.newsroom.heart.org/index.php?s=43&item=11891
『参考文献:【IFI_002】』
本文の最後に記してあります。
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【2】軽症心不全への適用
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慢性心不全とは「慢性の心筋障害により心臓のポンプ機能が低下し、
・・・生活機能に障害を生じた病態」であると定義されています。
『参考文献:【IFI_003】』
米国で500万人、日本でも100万人の患者がいるといわれています。
NYHA分類(ニューヨーク心臓協会による心不全機能分類)で
重症とされるIIIおよびIVについては、これまでも治療の対象とし、
利尿剤(うっ血を取り除く)やジギタリス(強心剤)などによる
治療が行われてきました。
しかしながら、比較的軽症のNYHA分類II
(心疾患患者で日常生活が軽度から中等度に制限されるもの。
安静時には無症状だが普通の行動で疲労・動悸・呼吸困難・狭心痛を生じる)
では、生活の質を向上させる有効な治療は確立してはいませんでした。
一方で日本でも
「我が国の慢性心不全患者も心不全増悪による再入院率が高い」とされ、
早期の治療の重要性が主張されていました。
『参考文献:【IFI_004】』
この程発表された大規模臨床試験の結果は、
この早期治療に道を開くものとして期待されています。
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【3】エプレレノンの今後
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エプレレノン(Eplerenone)はアルドステロンの受容体である
ミネラルコルチコイド(MR)への選択性が非常に高い受容体拮抗薬で、
その薬理作用は明らかにされています。
『参考文献:【IFI_005】~【IFI_006】』
当初は高血圧薬として開発され、日本でも2007年に承認されています。
一方、心不全の治療薬としては、2003年にまとめられたEPHESUS試験により、
NYHAがIII~IVの場合有意に生命予後が改善されることが示されています。
『参考文献:【IFI_007】』
日本では心不全薬としては未承認ですが、同様の第III相多施設臨床試験が
2010年に開始されています。(Clinicaltrials.gov治験番号 NCT01115855)
アルドステロン拮抗薬としては、
すでにスピロノラクトン(Spironolactone)が用いられていますが、
女性化乳房などの副作用が知られています。
エプレレノンではそうした副作用が減少しています。
また、心室の肥大抑制や腎保護作用なども、
いくつかの大規模臨床試験の結果知られるようになってきています。
『参考文献:【IFI_008】~【IFI_011】』
日本での症例報告も出始めています。
『参考文献:【IFI_012】』
これらのエビデンスから、今後の承認と臨床応用が待たれます。
軽症心不全治療薬 エプレレノン(Eplerenone)