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【1】ITPとその治療
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原因不明(近年、免疫性の疾患であることがわかりましたので、
免疫性血小板減少症とも呼ばれています)で血小板が減少し、
出血傾向が高まる疾患で、日本には患者さんが2万人弱程度いる
といわれています。(平成18年の厚生労働省の調査)
治療が困難なことから、難病に指定されています。
通常は血小板が10万/μL以下の病態をいいますが、
治療目標としては3万/μL以上、できれば5万/μL以上を維持します。
これであれば出血傾向が押さえられ、経過観察の状態にまで至ります。
これまで、ITPの治療としては、血小板の破壊を進める
血小板抗体の産生を押さえる治療として、
副腎皮質ステロイドを中心とした免疫抑制剤や脾臓の摘出、
ヘリコバクターピロリ菌の除菌などが行われています。
近年、血小板の増加を目的とした薬剤が開発され、
臨床試験の結果、その有効性が示されました。
こうした薬剤の中から、エルトロンボパグをご紹介します。
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【2】エルトロンボパグ(Eltrombopag)
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経口投与可能な世界で初めての薬剤で、
トロンボポエチン受容体の膜貫通部分に結合して作用する、
低分子の非ペプチド化合物です。
『参考文献:【IFI_026】~【IFI_032】』
こうした作用は1990年代初めには知られていましたが、
臨床試験の結果、逆に血小板の減少という副作用があり、
1998年に一旦開発は中止された経緯があるため、
現在の薬剤は第二世代と呼ばれています。
2006年から2007年にかけて、エルトロンボパグの第III相臨床試験
(RAISE試験)が実施され、慢性の免疫血小板減少症に有効であることが
示されました。(197症例、オッズ比8.2、99%CI:3.59-18.73、p<0.0001)
『参考文献:【IFI_033】』
これを受けて、2008年にFDAの承認を受け米国で上市されたほか、
2010年にはヨーロッパでも承認されています。
日本では、2010年10月に承認されています。
また長期に渡る効果と安全性についての試験
(EXTEND試験)も実施中であり、
途中経過では血小板の増加が見られたとしています。
(ClinicalTrials.gov治験番号 NCT00351468)
http://bit.ly/eeBVgA
同様に、日本でも臨床試験が進行中(2010年12月終了予定)で、
前治療歴のある患者さんを対象に、プラセボとの二重盲検と
それに続くオープンラベルの試験です。
低用量のエルトロンボパグを6ヶ月投与し、
血小板の増加と出血の減少を見たと報告されています。
(ClinicalTrials.gov治験番号 NCT00828750)
http://bit.ly/gTPL67
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【3】その他のトロンポポエチン受容体作動薬
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エルトロンボパグの他にも、同様の薬剤が開発されています。
皮下注射で投与するロミプロスチム(Romiplostim)は、
やはり2008年に米国で承認されています。
また開発中の薬剤としてはAKR-501、LGD-4665、RWJ-800088などがあり、
現在第I相もしくは第II相の臨床試験が行われています。
日本でもS-888711の第I相試験が行われています。
『参考文献:【IFI_031】~【IFI_032】』
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に対する
経口投与剤エルトロンボパグが承認される