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【1】アルツハイマー病の治療
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認知症の中でも、アルツハイマー病の患者数は多く、日本では家庭で
介護されている患者さんまで含めて140万人から170万人程度いるといわれており、
85才以上の高齢者では25%に何らかの症状があるといわれています。
治療法としては、進行を遅らせる薬物療法が主ですが、
日本ではこれまでドネペジル(Donepezil)しか承認されておらず、
唯一の治療薬でした。
しかしながら、欧米では新薬の開発・承認が進み、
『参考文献:【IFI_034】~【IFI_036】』
日本神経学会などの作成する「認知症疾患治療ガイドライン2010」でも、
ドネペジルと並んで、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンの
4剤が治療に有効であるとして推奨されています。
このうちガランタミンとメマンチンが2011年1月に日本でも承認されました。
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【2】ガランタミン(Galantamine)
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ガランタミン(臭化水素酸ガランタミン)は、軽度ないし中等度の
アルツハイマー病の認知機能の病状進行を遅らせる作用があります。
脳内神経伝達物質であるアセチルコリンを分解するコリンエステラーゼを
阻害し(AchEI)、同時にニコチン受容体を刺激してアセチルコリンの放出を
促し(APL作用)、アセチルコリンの濃度を高め、学習や記憶などの症状を
改善ないしは進行を遅らせる作用をします。
『参考文献:【IFI_037】~【IFI_038】』
ニコチン受容体刺激作用は、ガランタミンに特有のもので、
ドネペジルには無いものです。
また、神経細胞死に対し保護薬として作用し、病態の進展にたいする
抑制効果も期待されています。
『参考文献:【IFI_039】~【IFI_040】』
1999年にオーストラリアで承認された後、2000年に欧州で、
2001年には米国で承認され、すでに70ヶ国以上で使用されています。
日本では2004年までに第III相試験が行われましたが、
追加試験が行われ2008年までに終了しています。
(ClinicalTrials.gov 臨床試験番号 NCT00814801)
この結果2011年1月の承認にいたった訳です。
審査のための詳しい情報は医薬品医療機器総合機構の
ホームページで見ることができます。
http://tinyurl.com/3cbhyy9
ガランタミンは、日本で初めてオオマツユキソウ(別名スズランスイセン)
由来のアルカロイドを単離して製造されました。
その後オーストラリアで合成され、現在は化学合成により製造されています。
『参考文献:【IFI_041】~【IFI_042】』
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【3】長期予後にも期待
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アルツハイマー病は基本的には進行性の病気ですので、
治療のポイントは病気の進行を遅らせる点にあります。
その点、ガランタミンは長期的な効果が認められています。
『参考文献:【IFI_043】』
長期にわたる患者さんへの介護は、家族にとっても大きな負担となりますが、
ガランタミンの高用量投与で介護者の負担が有意に少なくなったとする
報告もあります。
『参考文献:【IFI_044】』
アルツハイマー病の新しい治療薬 ガランタミン