骨粗鬆症は、骨密度や骨質などが低下し、骨が脆弱となり、
骨折しやすい状態となる全身的な骨疾患です。
女性ホルモンの減少により、破骨細胞が活性化する閉経後の高齢の女性に
好発する他、ステロイド剤によるものや、高血圧や脂質異常症、糖尿病
といった生活習慣病とも関連するといわれています。
骨密度による診断では、50才以上の女性の30.6%、男性の12.4%、
合わせて1380万人の患者がいると推計されています。
『参考文献:【IFI_058】』
FRAXという骨折リスク評価基準など、その診断基準も確立されてきており、
骨折予防のための早期の治療開始が必要とされています。
『参考文献:【IFI_059】』
これまで、その治療には骨吸収抑制剤であるビスホスホネート
(Bisphosphonate)が主に用いられてきましたが、最近骨形成促進剤である
テリパラチドが日本で承認され、新たな治療の選択肢が提供されました。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
■ テリパラチド(Teriparatide)
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
テリパラチドは、ヒト甲状腺ホルモン(PTH)の1~34番目のアミノ酸に
相当するペプチドで、遺伝子組み換えにより産生されるものです。
副甲状腺機能亢進症のように血中PTHが持続的に高い状態では、
骨吸収が亢進し骨密度が減少するという骨異化作用がありますが、
これを間欠的に使用すると、骨形成が促進されるという相反する
作用があります。
この作用を利用し、骨形成を促進するという
新たな治療法が確立されつつあります。
『参考文献:【IFI_058】~【IFI_062】』
米国を中心とした臨床試験で、骨折予防効果が立証され
2002年に米国で承認されました。
『参考文献:【IFI_063】』
次いでヨーロッパなどで承認されました。
日本でも臨床試験が行われ(ClinicalTrials.gov治験番号 NCT00433160)
その結果有効性、安全性が示され、2010年7月に承認され、
10月より発売開始となりました。
(医薬品医療機器総合機構資料 http://tinyurl.com/5sb8ztu)
現在では世界の86ヶ国で承認されています。
1日1回の皮下注射による投与ですが、承認時には18ヶ月までを
投与期間の上限としていました。
現在は24ヶ月まで延長され承認されています。
これは、高カルシウム血症の可能性や、
『参考文献:【IFI_061】』
ラットによる前臨床試験で発癌性が疑われため、
『参考文献:【IFI_064】』
長期にわたる投与を制限したものです。
また、ビスホスホネートとの併用は効果が無いとされています。
『参考文献:【IFI_060】』
腰背部痛の発生頻度が低下する、という報告もあります。
『参考文献:【IFI_065】』
しかしながら、毎日皮下注射を行うのは患者さんにとっても負担であり、
投与を週一回にする方法が検討されています。
『参考文献:【IFI_066】~【IFI_067】』
またパッチの貼付による治療も試みられています。
『参考文献:【IFI_067】』
2006年の「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」では、
PTHはまだ臨床試験で効果が出ている、という記述に止まっていますが、
2011年に改訂が予定されている新版では、上記の新たな知見が取り入れられ、
ビスホスホネートと並び、第一次選択薬となる可能性もあるものと思われます。
骨粗鬆症の骨形成促進剤 テリパラチド