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【1】うつ病
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ストレス社会と呼ばれる現代においては、うつ病はまれな疾患ではありません。
生涯有病率は高く、日本や米国の調査でも人口の14~17%に及んでいます。
厚生労働省の調査では少し少なく、男性で3.84%、女性で8.44%、
合計で6.16%とされています。女性に多いのも特徴です。
その治療も薬物によるものが中心で、それに生活習慣の改善などが加わります。
薬剤としては第一世代と呼ばれる三環系、第二世代と呼ばれる四環系薬剤に続き、
第三世代と呼ばれるSSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor:
セロトニン再取り込み阻害剤)が登場し、治療の選択肢が増えました。
『参考文献:【IFI_083】~【IFI_085】』
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【2】エスシタロプラム(Escitalopram)
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セロトニンは神経伝達物質の一つでモノアミンと呼ばれる物質の一種類ですが、
シナプスから放出され反対側のセロトニン受容体に作用し活性が保たれます。
モノアミンを活性化させる三環系抗うつ剤が有効であったことから、
うつ病の原因としてモノアミン仮説が生まれましたが、
中でもセロトニンが重要な役割を果たしていると考えられるようになりました。
セロトニンはシナプスの裏側にあるトランスポータで再取り込みされ、
再利用されますが、セロトニンの量が減少することによる抑うつ状態を改善するため、
セロトニンの再取り込みを阻害し、セロトニン濃度を上昇させようというのが
SSRIの薬理作用です。
これまでもいく種類かのSSRIが開発されていますが、エスシタロプラムは、
中でも最も選択的な阻害作用が強く、効果の発現が早い、重症にも有効などの
特徴を持っています。
シタロプラム(Citalopram)の光学異性体(S体)であり、
抗うつ効果はこのS体のみが有しています。
もう一つの異性体であるR体は、セロトニンのトランスポータでの
再取り込み阻害を干渉すると考えられ、このR体を除いたエスシタロプロムは
シタロプロムよりも力価が高く、約2倍の再取り込み阻害作用があります。
『参考文献:【IFI_086】』
2001年にスエーデンで、2002年には欧米で承認されて以来、
世界の96ヶ国で承認されています。
日本では2011年4月に承認されました。
これまで欧米では数多くの臨床試験が実施されていますが、
日本でも承認へ至る過程でいくつもの臨床試験が行われています。
小規模な安全性試験『参考文献:【IFI_087】』、
用量を決めるための中規模な試験『参考文献:【IFI_088】』、
paroxetineに対する非劣性試験『参考文献:【IFI_089】』、
長期投与試験『参考文献:【IFI_090】』などです。
これらにより、安全性と有効性、投与量(20mg)などが示されました。
コクランレビューでもcitalopramなどの他剤と比較して同様の結果が示されており、
PubMedで英文抄録が読めます。
http://1.usa.gov/pVGu0v
うつ病の持つ側面の一つである全般的不安障害(Generalized anxiety disorder:GAD)
に対しても、SSRIは有効であるとされていますが、
『参考文献:【IFI_091】【IFI_092】』
中でもEscitalopramでは急性期初期治療や再発予防に優れていることが示されています。
『参考文献:【IFI_084】【IFI_093】』
第三世代抗うつ剤 エスシタロプラム