関節リウマチは関節滑膜の慢性的な炎症で、
関節軟骨や骨の破壊が持続的に進行する疾患です。
病因はまだ明らかにはされていませんが、免疫性異常によるものと
考えられています。
30才~50才の女性に多く発病し、有病率は人口の0.4~0.5%であると
いわれています。
日本ではおよそ70万人の患者さんがいるといわれています。
治療法としては、以前は非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)が使われていましたが、
免疫制御を目的とした抗リウマチ薬メソトレキセート(MTX)が
標準的に使用されるようになりました。
しかしながら、関節破壊を防ぎきれない場合があり、
新たにTNF(Tumor necrosis factor)阻害薬が開発され、
新たな治療の方向が開拓されてきました。
『参考文献:【IFI_108】』
日本リウマチ学会の
「関節リウマチ(RA)に対するTNF阻害療法施行ガイドライン」では
「既存の抗リウマチ薬通常量を3ヶ月以上継続して使用しても
コントロール不良のRA患者」にはTNF阻害薬の使用が推奨されています。
『参考文献:【IFI_109】』
そうした中で開発された薬剤がインフリキシマブ(Infliximab)、
アダリブマブ(Adalimumab)などですが、最新のものとして
ゴリムマブが承認されました。
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【1】ゴリムマブ(Golimumab)
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ゴリムマブはトランスジェニックマウスで作るIgGですが、
ヒトのタンパク質のみを有する完全ヒト型の抗TNF-α抗体
(炎症性サイトカインの一種)です。
先行する同様の生物製剤であるインフリキシマブなどがキメラ型であり、
投与時の即効性や効果が減衰するなどの欠点があるといわれていますが、
完全ヒト型のゴリムマブはこれらの点を解消しています。
生物製剤は関節破壊を阻止する効果も見られ、関節リウマチの治療方針が
関節症状の緩和から、関節破壊阻止へと向かい、完全寛解の症例も
みられるようになってきました。
『参考文献:【IFI_110】~【IFI_111】』
2005年よりGO-FORWARD試験(第3相試験 ClinicalTrials.govの
臨床試験番号 NCT00264550)など多くの臨床試験が実施され、
MTXによる治療が不良の場合、MTXとの併用での有効性と安全性が示されました。
『参考文献:【IFI_112】~【IFI_116】』
これらの試験では他の生物薬剤に対しての優位性は示されませんでしたが、
4週に1回の皮下注射で効果があることから、
患者さんのQOLに及ぼす影響が少なく、大変使いやすい薬剤となっています。
日本でも第3相の試験が行われており、まだ学会発表しかありませんが、
上記の試験結果を追認する結果が出ています。
『参考文献:【IFI_117】~【IFI_118】』
Cochrane Libraryにはシステマティックレビューがありますが、
J Rheumatol誌には論文としても掲載されています。
『参考文献:【IFI_119】』
これらの結果を受けて、2009年7月には米、加、欧州などで承認されるなど、
世界の40ヶ国で承認されています。
2011年7月には日本でも承認されています。
(医薬品医療機器総合機構承認情報 http://bit.ly/netQZA)
9月12日には、他の17薬剤とともに薬価収載されました。
ゴリムマブは4週に1度の皮下注射が特徴ですが、
さらに12週で1度の静脈注射による効果を見るGO-LIVE試験も進行中です。
『参考文献:【IFI_120】』
関節リウマチの生命予後は健常人と比較して約10年悪いとされていますが、
TNF阻害薬が生命予後を改善する可能性も示されています。
『参考文献:【IFI_121】』
関節リウマチの新しいTNF阻害薬 ゴリムマブ