てんかんの有病率は0.5~1%程度とされ、
世界で5000万人、日本国内でも100万人の患者がいると推定されています。
病態としては「局所性ないし全般性の過同期(過剰)神経発射による
中枢神経機能の発作的な撹乱現象を主症状とする症候群である」
と考えられています。
『参考文献:【IFI_150】』
治療方法としては薬物治療が行われています。
ここ20年くらいの間に、新たな薬理作用を持つ新規抗てんかん薬が
次々と開発され、日本でも承認がすすんでおり、臨床にも適用されています。
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◆ レベチラセタム(Levetiracetam)
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レベチラセタムは光学活性をもつピロリドン誘導体(S-光学異性体)であり、
神経終末のシナプス小胞2A(SV2A)と特異的に結合し神経伝達を調整する
可能性があるとされています。
『参考文献:【IFI_151】』
これまでの抗てんかん薬が神経細胞および神経伝達系の過剰な興奮を
抑制するため、電位依存性イオン(Na+やCa+)チャンネルを阻害したり、
GABA作動性神経の増強、グルタミン酸作動性神経抑制などを主な薬理作用と
していたのとは大きく異なります。
この、他の薬剤とは異なるユニークな薬理作用を持つことがレベチラセタムの
大きな特徴で、このことにより、他剤との併用療法を容易にしています。
抗てんかん薬の併用にあたっては、作用メカニズムの異なる薬剤を
選択することが原則となっているからです。
『参考文献:【IFI_152】』
さらにレベチラセタムは、経口投与後すみやかに消化管より吸収され、
投与後1時間で血中濃度がピークとなり、半減期は成人で6~8時間なので
1日2回投与で48時間後には定常状態に達します。
加えて肝臓での代謝酵素の影響を受けず、腎臓より排泄されるので、
薬物相互作用がほとんど無く、他剤との併用が容易なのです。
『参考文献:【IFI_153】』
QOLが上昇する可能性もあるとされています。
『参考文献:【IFI_154】』
海外で様々な臨床試験が行われた結果、1999年に米国で、
2000年に欧州で発売されて以来、世界の92ヶ国で承認・販売されています。
日本国内でも臨床試験が実施され、213例の難治部分てんかんでのプ
ラセボ対照試験で発作減少率、50%レスポンダーレート、
発作消失率のいずれでも対照群に対し有意な結果が出ています。
『参考文献:【IFI_155】』
2008年に日本小児神経学会より早期承認の要望書が厚生労働省に
提出されたこともあり、日本では2010年7月に承認されました。
「他の抗てんかん薬では十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作
(二次性全般化発作を含む)に対する抗てんかん薬との併用療法」が認められ、
9月には発売が開始されています。
(医薬品医療器機総合機構 承認情報 http://bit.ly/uDhI71)
米国のエキスパートオピニオン2005でも、レベチラセタムは症候性部分
てんかんでカルバマゼピンなどとの併用療法で第一選択薬にあげられています。
『参考文献:【IFI_156】』※こちらの文献は、上記の概要に触れています。
現在は併用療法のみの承認ですが、一次選択薬として有効である可能性も
示されています。『参考文献:【IFI_157】』
また、日本てんかん学会は2011年6月に
「てんかんの薬物療法は、多剤併用より単剤投与の方が薬物相互作用による
安全性の点から望ましい」との要望書を厚生労働省へ提出しており、
レベチラセタムの単剤投与の方向性も示されています。
欧米では、4才以上の小児でも使用されていることから、
日本でも小児への投与の可能性が求められています。
『参考文献:【IFI_158】~【IFI_159】』
さらに、妊婦や授乳中の女性への投薬には注意が必要との見解もありましたが、
『参考文献:【IFI_160】』
出生異常を来さないというデンマークでの研究結果も最近発表されています。
『参考文献:【IFI_161】』
副作用の極めて少ないレベチラセタムの臨床応用が期待されています。
新規抗てんかん薬 レベチラセタム